えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
「ただ加護が無くなっただけ。確かに少し不便になることもあるけど、前に言ったように加護なんて無くてもいいんだ。加護で国を治める訳じゃないんだから」

“ただ加護が無くなっただけ……”

「それとも加護が無い僕には価値はないかな?」
「そんなことありません!」

 少し眉尻を下げたジルがそんなことを口にし、私は咄嗟に声をあげる。

「うん、そうだよね。だって加護が無いだけだもんね」

 それはまるで、加護がないということが大したことではないと言っているような言葉に聞こえた。
 加護が最初から無かった私ごと拾い上げるような、そんな言い回しにこんな状況だというのに思わず小さな笑いが漏れる。

「えぇ、そうかもしれません」
「むしろ僕はルチアとお揃いになれて嬉しいよ」
「もう、ジルってば」

 にこにこと笑うジルを見ていると、本当に加護が無いというのは重要なことでは無いのだとそう思わされた。

「でも、私みたいに最初から無いならともかく戻せるなら戻しましょう」
< 142 / 262 >

この作品をシェア

pagetop