えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
「ルチアとのデート楽しみだな! うん。仲睦まじい婚約者としてどんどんアピールしなきゃね」
「めげませんね、殿下……」
「しれっと着実に外堀を埋めている殿下の質が悪いのは事実だけれど、そうさせているのは私たちの娘のせいかしらね」
「つまりは私の教育ということか……」

 はぁ、と後ろで固まっている家族からのため息に首を傾げつつ、私はジルを安心させるように笑顔を向けたのだった。

 ◇◇◇

「まずは一緒に孤児院へ行ってみない?」

 ジルが加護を失った翌朝、相変わらず当然のように一緒に朝食を取っていると、ジルからそんな提案がされる。

「孤児院ですか?」
「そう、守るべき王族として色んな現状を知らないといけないからね」
「素晴らしいと思います!」

“加護が無くなっても、ジルはジルだわ”

 皆から慕われる王太子。
 その責務を立派に果たそうとする彼の姿は、もう光の加護で発光出来なくなってもキラキラと十分光輝いて見えた。

「わかっていると思いますが、護衛は……」
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