えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
“確かにジルって子煩悩になりそうよね”

「僕はいい父親になると思うんだよね」
「えぇ、そうですね!」
「ルチアもいい母親になると思うよ」
「私もお母様みたいな強くて格好いい母親になりたいです」

“子供、かぁ……”

 いつか彼が誰かとそうやって家族を作っていくのかと思うと、言い様のない寂しさが私を襲う。
 だがここで暗い顔をする訳にはいかないだろう。

「私も子供って好きです、真っ直ぐで」
「ルチアとの子は格別可愛いけどみんな可愛いもんね」
「えぇ、可愛いですね」
「ダメか、子作り意識作戦……。まぁ、それとは別に子供ってみんな平等に見てくるから」

 一瞬笑みを消し呟かれた言葉にドキリとする。
 確かにジルの言葉通り、子供たちに権力は関係ない。

“私に加護がないように、全属性の加護を持っていたジルは常に特別扱いだったものね”

 神の愛し子。
 その呼び名は彼を特別にし、そして彼を孤立させるには十分だった。

“だから私だけは彼を特別視しないって決めたけど”

 けど、子供たちもまた私とは違った理由で彼を特別視しないのだろう。
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