えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
 彼らにとって重要なのは相手の権力ではなく、誰が何をしてくれるかだから。

“遊びに来てくれたお兄ちゃん、それがきっと今の彼の呼称なのね”

 ジルがここに来た理由がよくわかる。
 きっと彼も突然加護を失い不安なのだろう。

 ずっと持っていた加護が全て無くなり彼を特別にしたキッカケが消えたのだ。
 加護がなくても彼がこの国唯一の王子であることには変わりないが、それでも加護の力が後押ししていたことも確かなのだから。

「大丈夫、ジルは何も変わってないわ」
「ルチア?」
「加護があってもなくても、私は……、ううん、私もここにいる子供たちにとっても、ジルはずっとただのジル。大切で大好きなジラルドよ」

 ハッキリそう断言すると、じわりとジルの頬が染まったのだった。
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