えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
「うん、やっぱり僕子供って好きだな」

 何故かジルが上機嫌になっているが、今はそれどころではない。

「絶対今の、私たちがそのうち結婚するって勘違いされましたよ!?」
「するよ?」
「ジルはすぐそういうことを言う!」

 相変わらずリップサービスの上手いジルにいちいち顔が熱くなってしまうことがやっぱり悔しい。

“私だけ振り回されているわ”

 わかってる。彼のこの言動は、真実味を出すためのもの。
 私との関係が偽物だとバレてしまっては肉壁として意味を成さないから、こういうことをわざと言っているのだろう。

“だから信じちゃダメなのに”

 すべてはどこかで見ている誰かに向けてのアピールで、この婚約の真相を知っている仕掛人の私だけは騙されてはいけないのだ。
 それなのに。

「ほら、折角来たんだから遊ばなきゃ」
「……なんだか本当に嬉しそうですね」
「こうやってルチアと遊べる機会はなかなかないからね」
 
 私の手を引き子供たちの元へ向かうジルは、普段の完璧な青年の顔を外してどこか無邪気な少年のようで。
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