えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
 外に向ける王太子の彼ではないけれど、私のよく知っている彼。
 加護が無くなったなんて思えないのは、彼がいつも通りだからだろう。

「……加護が無くなっても何も変わらないんですね」
「ルチア?」
「え、あ! ちがっ、今のは違うんです!」

 口に出すつもりなんて全然なかったのに思い切り言葉を滑らせじわりと冷や汗が滲む。

“ジルの加護は特別だってわかってたはずなのに!”

 加護なんてなくてもいい、と口にすることも多いジルだが、今まで当たり前のように使えていた能力を突然失って平気な人なんていない。

 この失態に何を言っていいかわからず私が俯くと、そっと頭を撫でられて思わず目を見開いた。

「――ずっとそう言っていたでしょ。加護なんてあってもなくてもいいんだ」
「ジル……」
「あったら確かに便利かもしれないけれど、無くても困らない。加護がないなら他でいくらでも補える」

 それは私が彼に加護がなかったことを告げた時に言われたことと同じ意味合いの言葉。

“ジルはあの時から本気でそう思ってくれていたんだ”
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