えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
 加護が無かったことを嘆く私を励ますための言葉ではなく、彼が本心からそう思っているからこそ今もこうやって口に出来るのだろう。

“私は本当に小さいわ”

 こんなに何度も言ってくれていたのに、どこか自分を励ます為に言ってくれているのだと思い、彼のその言葉を心の底から信じられていなかったことを暴かれた気分になる。

 そしてそんな誠実な彼だからこそ、私も誠実でいたいと改めてそう思った。

「ジルを形作るものは加護じゃないです。私ははじめて会った時に約束したように、今も、そしてこれからもジルだけを見つめます」

 子供たちと一緒に走り回り、泥だらけになって大きな口で笑う。
 そんな彼も本物の彼であることに違いがないのだから。

「だからずっと、見つめられていてくれますか?」
「……あぁ。僕もずっと、ルチアのことを見ているよ」
「はい。約束ですよ」

“もしこのまま彼の加護を戻すキッカケが見つからなくても、誰よりも私が彼の味方になるわ”

 加護のない、盾にも影にもなれなかった私に何が出来るのかと思っていた。
 でもきっと、彼のことを見ているだけで良かったのだろう。
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