えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
 ただ彼を認め、見つけ、見つめればいい。
 そして今私はそんな彼の婚約者なのだ。

 隣に立つ権利がある私が、彼の壁として一緒にいれる。
 例えその時間が今だけなのだとしても、それでもきっと好きな人と過ごせる時間は何よりも尊いものだから。

“だから絶対、貴方を守るわ”

 
「そういえば、尋問の件だけど」
「ぅえっ!?」

 気合いを入れていた私の耳に物騒な単語が飛び込み変な声が漏れる。

「この間ルチアを拐った犯人のことだよ」

“あの時の!”

 結局怒鳴られはしたものの犯人の顔すら見ず救助されたことと、一人ではなかったこと。
 そして夜通しジルが側にいてくれていたお陰で若干忘れつつあったことをなんとか思い出しへらりと笑みを作る。

“あとすぐその後にジルが襲われるっている衝撃的なことがあったせいで一瞬抜けてたわ”

 私の笑顔にジルが苦笑したので、頭から抜け落ちていたことに気付かれていそうである。
 だがその事には触れず、真剣な表情になったジルが再び口を開いた。

「結局彼らは何も知らず、雇われただけだったようだ」
「じゃあ、何も情報は……?」
「うん、ごめんね」
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