えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~

21.揺れて、迷って

「そんな、なんでララが!」

 ジルから告げられたその答えに反射的に反論してしまう。
 そんな私を少し困ったように見たジルが、小さく首を横に振った。

「ルチアのその気持ちは僕もわかるよ。あくまでも可能性の話だ」

“可能性”

「ただ、結果的にルチアの信頼を勝ち得たという事実が残っている」
「私のこの気持ちこそ仕組まれたことってことですか?」
「逆に結果としてふたりとも助かったものの、あの状況でルチアだけが襲われていた可能性だってある。ふたりとも被害者ならば、世間は疑わないだろう」

 ジルの言いたいことはわかる。
 王太子の婚約者誘拐に巻き込まれた公爵令嬢。結果として彼女だけが生き残った場合、亡くなった婚約者の次の婚約者として抜擢される可能性が高い。

 ララならば身分も問題がなく、またその直前に私とも仲良く買い物をしお揃いのものまで購入していた。
 そんな彼女が誘拐犯に対して共に抗い、そして生き残った彼女が友人の意志を継ぐというのはドラマチックに映るだろうから。
 民衆の指示が得られるならば、十分政略的に効果もある。
 
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