えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
 王族である以上、民衆の支持は優先しなくてはならない意志のひとつだ。

“だからわざわざララがそんなことを仕組んだっていうの?”

「……あり得ません、ララはジルを諦めると言っていました」
「それはあの事件でふたりとも無事だったあと?」
「ッ」

 確かにあの事件が無事に解決し、すべて終わったあとだった。
 もし彼女があの作戦を仕組んだ張本人ならば、『失敗に終わった』あとのことである。

“失敗したから手法を変えたってこと? 婚約者()を消せないなら婚約者()に取り入る方が良くて?”

「あの時、僕たちがすぐに動けたのは公爵家の護衛が撒かれたという連絡が入ったからなんだ」
「……え?」
「だからすぐにルチアたちの足取りを追えた」

 淡々と話すジルに思わず口ごもる。

 あの日私たちの護衛についてくれていたのは公爵家の護衛で、彼らが全員気付けばいないことだって確かに不自然ではあった。

「でもララは拐われた時に震えていて……!」
「……」

 何も言ってくれないジルにびくりとする。
 彼の言う可能性は十分にあり、そういった可能性は見過ごせない。
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