えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
 一人で帰ってきた家がいつもより広く感じて寂しさが沸き上がる。

 そんな気持ちを振り切りたくて私室まで行儀悪くも走った私は、その勢いのままソファへと飛び込んだ。

「わかってる、わかってるの」

 ジルは正しい。
 それに今彼は加護を失い心細いはずなのだ。
 ならば肉壁として、こんな時こそ彼の側にいなくてはならないということもわかっている。

 それでもジルと同じくらいララのことだって好きになってしまったから。

「本当にララも関係しているの?」

 私が殺したいほど邪魔だった?

 今まさに揺れてジルを一人にさせてしまっているというこの現状こそが狙いだった?

「違う、そんなはずない……」

 ならなんであの時護衛が全員いなくなったの。
 どうして誘拐先がないなんてことに成りえるの。

 彼女を信じたいという気持ちは嘘ではないが、今は何をどう信じればいいのかわからない。

 まるで思考にモヤがかかったように、私はただただソファに置いていたクッションへと顔を埋めていたのだった。
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