えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~

22.今は婚約者という力がありますから

“あれからもう二週間ね……”

 孤児院に行った日から今日まで、あんなにしょっちゅう我が家に入り浸っていたジルは一度も来てはいなかった。

「どうしてるのかしら」

 仕事が忙しい?
 孤児院に行ってる?

 もしかしたら真実の愛を見つけたのかもしれない。

「そうなったら肉壁はもう用無しね……」

 まだ何一つそうと決まっていないのに、そんな想像をして視界が滲む。
 想像だけで心臓が潰れそうなくらい苦しいのに、もし本当に彼からそう告げられたら――

「ルチア」
「ひゃっ!?」

 うだうだうじうじとしていると突然扉がノックされて変な声を出してしまった私は、その恥ずかしさを誤魔化すように咳払いをしてから扉を開けた。

「……どうかしたの、お兄様」

 じろっと睨みながら無意識に兄の背後を確認してしまう。
 当然そこには探している人影は無かった。

「殿下はいないぞ」
「見ればわかります」

 わざわざ指摘されてムッとする。
 だがそんな私の様子を完全に無視した兄が親指で背後を指差した。

「殿下から贈り物だ」
「……え?」
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