えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
「神の愛し子という話だったのですが、まさか神に見放された……なんてことはありませんよね?」

 その悪意が滲む言い方に一気に頭に血がのぼる。

「あり得ません!」

 自分でも思ったより大きな声が出てしまったことに気付くが、だが怯んではいられない。

「じゃあ貴方はジ……ラルド殿下が積み上げた全てが加護によるものだと思っているということですか?」
「それは」
「それとも加護でしか彼を見ていなかったということですか? だから今彼の姿が見えないとでも仰るのでしょうか」
「私は」
「加護ありきでしか見ないなら、貴方の領地で取れたものも加護の力で素晴らしいものになっているのでしょうね。貴方の加護は……」

 チクチクと責めるように言葉を重ねる。
 相手の身分によっては私の方が後ほど罪を問われるかもしれないが、それでもいいと思えるほど苛立ちが勝っていた。

「水です」
「ならば水中で泳ぎながらしか成立しない特産品なのでしょうね」

 バサリと扇を開いて口元を隠しながらジロリと睨むと、気圧されたようにその男性が口をつぐむ。
 そして捨て台詞のように「加護無しのくせに」と呟いた。
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