えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
“それは……事実だから仕方ないわね”

 本当はジルに対しての謝罪まで引き出したかったのだが、この状況でここを離れるということは負けを認めたようなもの。

 ならばもういいか、と考え扇を閉じた時だった。

「それは僕のことも言っているのかな?」
「……え?」

 いつもよりグッと低くなった声に驚き見上げると、全然笑っていない笑顔にギョッとする。

「い、いえ私は」
「確かに今僕には加護がないんだ。けれど、残念ながら権力はあってね」
「で、殿下」
「……侮辱罪で連れていけ」
「ちがっ、殿下ッ!」
「ジル!?」
「ルチア、あっちへ行こうか」

 冷たくそう言い放った声色からずっと温度を込めた声色で私の名を呼び、腰へと腕を回したジル。
 そんな彼に促されるように騒動のあった場所を離れる。

 後ろではまだジルを呼ぶ叫び声のような声が聞こえていたが、私も腹を立てていたこともあり振り返らずにジルへとついて行った。

“誰もついてこないわね”

 ジルが向かったのは会場の端のスペース。
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