えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
 だが本当に毒が入っているのだろうか?

“毒だってわかっていたら叩き落とすんだけど”

 だがもしかしたらこれは本当にただの特産品かもしれない。
 そしてもしそうだった時、その商品を叩き落としたことがどのように影響が出るのかが一瞬で頭を過った。

 疑いがかかり価値を落としたとしての賠償金。
 それを理由に糾弾されるのは、ただの侯爵令嬢なのか、それともそんな令嬢を婚約者に選んだ王太子なのか。

“えぇい、こういう時は毒味よ、毒味!”

 軽く一口。
 嚥下する前に口内で違和感があれば吐き出してしまえばいい。

 そう判断した私がジルのグラスに口をつけてグイッと一口。
 口内にパチパチと弾ける泡は普通の炭酸で、ふわりと香るブドウの風味はさっき私が飲んだものと全く一緒。

“舌に痺れや苦味はないわね”

 もしかしたらこちらはシャンパン仕様だっただけかも。
 そう思った私がゴクリと飲み込むと、焦ったようなジルと目が合った。

「あ、ごめんなさい。私のとジルのが違ったみたいだから念のために毒味を」
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