えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
「なっ、以前も言っただろう!? 毒味でルチアを失うことの方が、自分が毒を飲むより辛いって……!」

 私の言葉に愕然とするジルの過保護さに苦笑しつつ、彼にグラスを返そうとした時だった。
 ぐらりと視界が揺れて手から力が抜ける。

 グラスひとつ持つことが出来ず、ガチャンと音を立てて床に落ちた。

“あ、ら……?”

 体が熱い。
 くらくらとして、一気に全身が火照り汗ばむ。

「ルチア、ルチア!?」
「わ、私……ジル、私……」
「ッ、さっきのメイドは……くそっ、いないか! いや、それよりルチアだ、すぐに医師を」
「……あ、あんっ」
「!?」

 焦ったように少し乱暴にジルが私の肩を掴む。
 それだけで全身がふるりと震え、熱い吐息と僅かな嬌声が私から溢れた。

「ルチア、少し顔に触れるよ?」
「んっ、あ……、んんっ」

 私の頬を撫でるジルの手がぞくりとした刺激を体に与え、下腹部がじゅんと熱を孕む。

「なに、これ……っ?」
「瞳孔は開いてない……、まさか媚薬の類いか?」
「び、やく?」

 そうだ。
 彼は今加護がなくて普段なら効かない薬も効く。
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