えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
 にこにことそんなことを宣言しつつひとつのネックレスを侍女から受け取った殿下が私の背後に周りそっと着けてくれる。

 そのまま私の頬に軽く自身の頬を触れさせた殿下が鏡越しに微笑むと、私の顔は面白いくらい一気に赤く染まってしまった。

「ち、近いわ!? 今までよりずっと!」
「婚約者になったんだ、これくらいは許されるはずだよ」
「でもっ」

 これが婚約者の距離なのかと目眩がしそうになりつつ、高鳴る鼓動が止められない。
 私はただの壁役だとわかっているのに、これではあまりにもサービスが過ぎる。

 それに今ここには侍女しかいないのだ、アピールする必要はないと思うのだが……チラリと見上げると楽しそうな殿下と目が合い、私の口からはそれ以上何も言葉は出なかった。


 会場である王城へは馬車二台で向かうことになった。
 一台はコンタリーニ家の家紋が入った馬車、そしてもう一度は王家の紋章の入った馬車である。

 王家の馬車にはもちろん殿下と肉壁婚約者である私、そして何故か「盾ですから!」と主張した兄の三人が乗り込み着いた王城。

「ルチア」
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