えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
「前に太股で挟んだ、ジルのなら奥、届く……?」
「と、どく、けど」
「なら挿れて……っ」

 ジルが私の部屋に泊まった時に太股で挟んだモノならば私の願いが叶う気がする。
 そう思った私は必死に彼にねだるが、しどろもどろになったジルが僅かに顔を左右に振った。

「ダメだ、それだけは出来ない」
「な……んで」

 明確に拒絶され、体は火照る一方なのに心が一気に冷たくなる。

「僕のを挿れる行為は、触れ合いの先にある行為なんだ」

“先にある、行為?”

 それはつまり、結婚した、もしくは結婚する婚約者同士がする行為。
 途中で終わってしまった閨教育の、最後の行為。

“あぁ、つまり”

 ――肉壁では、ダメなのだ。
 練習相手にはなれても、最後まではシて貰えない。
 だって私は、彼の特別ではないのだから。


 そう気付いた私の視界がじわりと滲む。

「最後までシて」
「……ダメだ」
「やだやだ、シてよぉ……っ、苦しい、苦しいの」
「指でするから」
「指じゃやだぁ……!」

 子供のように泣きじゃくりながら必死に願うが、彼が頷くことはない。
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