えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~

25.僕が全部してあげる

「私は、肉壁じゃ、ないの?」
「僕はそんなこと言ってない」
「じゃあ、私は」

 本当に許されるのだろうか。
 何にも出来ない私が、何でも出来る彼を望んでも。

「私も」
「ルチア?」

 ぽろぽろと涙を流す彼の頬を両手で包む。
 カラフルに潤むその瞳が、彼を形作るその全てが、こんな状況で泣いてくれる、そんな彼が愛おしくて堪らない。

「……愛してる」
「!」
「ジルのこと、愛しているわ」

“ずっと言いたかったこの言葉を告げる日がくるなんて”

 私が愛の言葉を口にすると、彼の瞳が見開きまん丸になる。
 その表情がいつもよりも幼く、そんな表情も可愛いと思った。

「私を本物の婚約者に、してくれる?」
「僕にとって最初から君以外に本物の婚約者なんていないんだけどね」

 くしゃりと破顔させて笑うその顔が見れるこの距離が、誰よりも近く触れられるこの距離が。
 どうして特別じゃないなんて思えていたのだろう。

 手を伸ばせば届くのに、頑なに伸ばそうとしなかった自分を後悔しながら私は少し体を起こしてジルへと口付けた。

「んっ」
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