えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
「!? なんでぇ……」

 今度こそ、と思ったのにまた却下されたことでへにゃりと顔を歪める。

 けれどどうしてもジルが首を縦に振ってはくれない。

「わたし、婚約者なのに、ジルのお嫁さんになるのにぃ」
「――ッ、かわっ、……いや、ダメなものはダメ」

 だがさっき拒絶された時とは違い、頬を上気させながら堪えるように言われたからか、悲しい気持ちにはならなかった。
 ただ残念なだけで。

“どうしてダメなの?”

 そんな疑問を彼も察したのだろう。
 熱い吐息を漏らすようにため息を吐いたジルが、そっと私の頬を撫でる。

「ルチアのはじめてを、薬の影響で奪いたくないんだ。……ずっと好きだったから、衝動に任せるんじゃなく、互いの意思でちゃんとやりたい」
「ちゃんと?」
「だから」

 だから、と口にするジルが私の耳元に唇を近付ける。
 彼の吐息が私をくすぐり、それだけで下腹部が今にも弾けそうなほど更に熱を含んだ。

「だ、から?」
「薬が抜けたら、僕の部屋に来て」
「――ッ!」
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