えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~

26.交代だなんて異議ありだわ!

「完ッ全にやらかしたわね」

 あのまま王城に泊まり、目を覚ました私からは当然といえば当然なのだが、そんな後悔の言葉が出る。

“なーにが最後まで、よ! 私!!”

 もし可能なら薬の影響でも構わないから昨晩の記憶は消えていて欲しかったのだが、そんな私の願いも虚しく残念ながらすべてを覚えていたことに泣きたくなる。

“ううん、全部は……忘れたくないかも”

 なんて項垂れつつ、苦し紛れにベッドに潜り込んでいると扉がノックされて飛び上がりそうなほど驚いた。

「だ、誰……!?」

 ここは王城。私の家でも私室でもないのに私を訪ねてくる相手なんて、どう考えてもジルくらいしかいない。
 そしてこれだけやらかした後だ。
 恥ずかしいことも恥ずかしい言葉も散々言ったせいで羞恥で顔から火が出そうである。

“合わせる顔がない……!”

 だが、ひぇぇ、と息を呑んだ私に聞こえたのは迷惑をかけた彼ではなかった。

「起きてるか」
「お、お兄様!?」

“そのパターンもあったわね”

 完全にジルだと思い込んでいた私は、聞きなれた兄の声を聞いて思わずガッカリし、そんな自分に苦笑する。
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