えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
 こんなにピリピリした兄はあまり見たことがなく若干戸惑うが、そんな私を無視して兄がすかさずサイドテーブルに乗せられていたベルを鳴らす。
 すると、待っていましたと言わんばかりの勢いで数人のメイドが部屋へと入ってきた。

 そんな彼女たちの手によって早着替えさせられたのは、夜会用ほどではないにしろがっつりとしたドレスである。

“えっ、何この重装備”

 家に帰るためにここまでしっかりしたドレスを用意することはないだろうと、なんだか嫌な予感が私の頭を過る。

 すると、着替えの間後ろを向いていた兄が振り向き私の方を確認した。
 咄嗟に痕が刻まれている首元を手で押さえると、その私の動きでその部分に何があるのか察し大きなため息を吐く。

“ちゃんと首元まで隠れているデザインだったのに!”

 自分の迂闊さを呪いながら羞恥心で俯いていると、兄から小さな声で問いかけられた。

「お前は殿下と結婚するのか?」
「するわ」
「なら、いい」
「?」

“私はもうジルの気持ちを見誤らないもの”

 だから、私はジルと結婚する。
 
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