えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
 その導き出した答えに愕然としていると、私の方をチラリとも見ず兄がため息を吐く。
 
「なるほど。お前が何もわかっていないことを理解した」

 その言い草に思わずムッと口を突き出してみるが、ジルには効果抜群でも兄には何ひとつ効果はなかったようで私を無視してそのまま両親の隣へと並んだ。

“私は……”

 兄の隣に並ぶか、メルージラ様の隣に並び両陛下の前に立つか。

 ジルの婚約者交代の話なら私が並ぶべきは彼女の隣だろう。
 そう判断し、兄には続かずメルージラ様の隣に立つ。

「違う違う違う!」
「バカ、俺の隣に並べッ! くそ、エスコートの手を離させるんじゃなかった」
「え?」
「あはは、ルチアはこっちにいておこうか」
「あらぁ」

 父が焦り、兄が嘆き、戸惑う私の手をジルがさっと引いて隣に並ばせる。
 両陛下の一段下にジルと並んで立つ状況に、母が扇を開いて口元を隠し感嘆の声を漏らした。

“えっ、まさか私ここ!?”

 ジルとは想いを通じ合わせたばかりだ。
 ならこれは彼なりの『婚約者交代はしない』という意志表示なのだろう。

 大丈夫よ、わかっているわ、ジル。

「私負けないからね」
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