えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
「うん、僕たちはもう勝ってるよ」

 彼にだけ聞こえるようにそう気合を入れると、これも彼なりの励ましなのだろう。
 にこやかにそう断言してくれた。

“さぁ、いつでも交代を申し出なさい! 高らかに異議を叫んであげるわ!”

 その瞬間をごくりと息を呑んで待っていると、コホンと咳払いがひとつ。
 そして口を開いたのは陛下だった。

「全員揃ったようだから始めよう。まず今回の夜会で媚薬を仕込んだことに間違いはないな?」
「意義ありッ!!」
「ルチア!?」
「…………、え?」

“び、媚薬?”

 思っていた話とは違ったせいで完全にやらかした。
 てっきり婚約者交代の話をされると思っていたのに。

“で、でも今から話ってどうすればいいのかしら”

 私がうっかり異議を申し立てたせいで完全に話の腰を折ってしまっている。
 助けを求めて家族の方へ視線を向けると、父は顔を両手で覆い俯いていたし、兄は父とは反対に天を仰いでいる。
 母は私から顔を背けて震えているので、笑いを堪えているのだろう。

“も、もうやるしかないわ”
< 198 / 262 >

この作品をシェア

pagetop