えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
 そのあまりの勢いに流石の殿下も一瞬ギョッとし、だがすぐに私を背後に庇おうと一歩出ようとされたところを、更にその一歩前へと進み出た。

“この為の私でもあるんだから!”

 何故なら私は、殿下がこの猛獣の群れに飲み込まれず本命と恋を育む為に選ばれた肉壁なのだ。

「あぁっら、ごめんなさい!?」

 体当たりしてくる勢いで飛び込んできた令嬢を体で弾き返す。
 そんな私に令嬢たちと何故か殿下までもが一瞬唖然とした。

「皆様がもの凄い勢いで飛び込んでこられたから思わず弾いてしまいましたわ!」
「なっ」
「でも仕方ありませんよね。無礼にも殿下の婚約者である私を差し置いて触れようとしてきたんですもの!」

 そう告げて威嚇するようにギロッと令嬢たちを睨む。
 流石に真正面から指摘されたからか、少し気まずそうな沈黙がその場に流れたのだが、その沈黙を破るようにその令嬢たちの奥から優雅な笑い声が聞こえてきた。

“ラスボス!? それとも中ボス!?”

 緊張が私を包む。令嬢たちも、その笑い声の主の花道を作るように一気に左右に分かれる。
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