えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
 ララに怒鳴るメルージラ様を止めるように兄が口を開く。
 そしてその言葉にまたハッと渇いた笑いを漏らしたメルージラ様が、私をチラリと見た。

「貴女とお姉様を一緒にすれば、恋に狂って亡き者にすると思ったんだけどね」

“まさかそれが私とララが一緒に誘拐された理由ってこと?”

 護衛がすべて消え不自然に二人きりにされた状況。
 誘拐だというのに一向に現れない乗り換えの馬車。
 
 それらの全てが、あの場所でララに私を襲わせるためのお膳立てなのだとしたら――

「やっぱりララじゃなかったわ」
「ルチア……」
 
 疑わなくてよかった、と心から思った。
 信じてよかった、彼女は何も知らなかったのだ。

“って、今はそんな場合じゃないわね”

 ホッとし緩みそうになる表情を慌てて引き締めた私は、もう一度メルージラ様の方へ顔を向ける。
 メルージラ様はもう諦めているのか、開き直ったような表情だった。

「媚薬の件はなんだったんだ?」
「それも同じよ。お姉様が殿下と既成事実でも作ってくれればいいと思ったの」
「つまり誘拐の件も媚薬の件も、ララとジルを引っ付けさせるためだったってこと?」
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