えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
 ポツリポツリと語られる内面。
 娘の蛮行に倒れそうになっているコルティ公爵夫妻は、それでも彼女の真意を知るべくじっとメルージラ様を見つめていた。

「ただ加護が強い。それだけで姉妹にここまで差を作ったお父様もお母様も嫌いだわ。加護が強いだけで婚約の申し込みも全て姉にだけ。私はこの家の恥だったのね」
「そんなことは……!」
「それに私は婚約なんて」
「してないのはお姉様が断ったからでしょう。選べる立場の人は余裕ね。恋を追いかけることも出来るんだから」

 彼女の口から発せられる数々の言葉は、まるでこれまでの全てを糾弾するように鋭い。

「貴女のことも嫌いって言ったわよね。理由は何だと思う?」
「……私に加護がないからですか」
「ふふ、わかってるじゃない。僅かな加護がある私より劣っている貴女が、どうして殿下の婚約者なの? 家族にも愛されて、みんなの中心に当然の顔して立ってるのよ!」

“彼女と私は同じだったのね”

 加護がないと嘆いたあの日。
 もし私に、『加護なんてなくてもいい』と言ってくれる人がいなければ、家族から向けられる愛ですら信じられず、歪んでこうなっていたかもしれない。
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