えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
 そう思うと自然と私の足が前へと動く。

「ルチア!?」
「大丈夫です」

 焦るジルへと笑顔をひとつ。
 心配してくれる貴方かいたから今の私がいるのだと、そしてそれはきっと――


 そのまま歩き、メルージラ様の前へと立つと流石に驚いたのか、一瞬怯んだ顔をされる。
 そんな彼女を落ち着かせるように微笑みを作った私は、近付いた勢いのままメルージラ様を抱き締めた。

“細い肩”

 この肩にどれほどの恐怖と絶望を背負っていたのだろうか。

「大丈夫ですよ。貴女は愛されています」
「……は?」
「もし娘のことを考えていない親なら、貴女の独白を聞かずに遮り縁を切っていたはず。でもそうせず、理解しようと耳を傾けてくれていたもの」

 彼女自身が言っていたように、邪魔になれば自身を守るために追放することだって可能なのだ。
 勝手に狂って何かを言っている、と言葉を塞ぎ、騒がした責任を取らせる形で家から追い出す。

 何を言い出すかわからない以上、余計なことを口にされる前に口を封じるのは当然のこと。
 それなのにコルティ公爵夫妻は何も言わずにただ聞いていた。
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