えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
「え、じ、ジル?」

 頭を下げる公爵の前でゆっくり手を振り言葉を止めさせたのは、他でもない被害者であるジルだった。

「加護なんてなくても問題ないって言っていただろう? 最初からなくても困らないものを失っても僕の輝きは健在だしね」
「えぇ、ジルは誰よりも素敵です! 輝いてます!」
「……うん。嬉しいけど今のは場を和ませたかったというか……いや、いいか。えーっと、とにかく彼女のその研究は悪くない。毒が薬になるように、失わせることが出来るなら新たに得ることも出来るんじゃないかな?」

“加護を、新たに?”

「今の加護は君の言う通り些細なものだけれど、加護が発現したばかりの頃はもっと強い加護だったという記載もある。ならば国の為にそういった研究を続けてくれる方がありがたいね」
「そ、れは……」
「もちろん罰なしには出来ないけれど、それでも良ければどうかな? 君の為に家族全員が一緒に没落する方がいい?」
「私は」

 ジルに問いかけられたメルージラ様がゆっくりと振り返る。
 だがコルティ公爵夫妻もララも何も言わない。

 まるでメルージラ様の決めたことに付き合うと言っているようだった。
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