えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
 そしてその道の真ん中を一歩一歩、燃えるような赤い髪を揺らしルビーのような真っ赤な瞳でじっと見つめながら思わせぶりに歩くのはフラージラ・コルティ公爵令嬢だった。

「相変わらず綺麗ね……!」

 少し気が強そうではあるが、殿下のように慈悲深く温和で優しい人にはもしかしたらこのようなタイプが似合うのかもしれないとドキリとする。
 それに公爵令嬢。身分だって申し分ない。

 もし彼女が殿下の本命なら、と思いチラリと顔色を窺うと、どうやら彼女は違ったようで殿下は割と死んだ目をしていた。

“よし、肉弾対象!”

「ルチア様の仰られる通りですわ。ジラルド様に触れていいのは許可された人間、つまり私のような人だけですもの!」
「そうですわ」
「フラージラ様の仰る通りです」
「それに、ルチア様には加護がなかったんですって?」

 さらりとそう告げられ、思わず口ごもる。

“確かに私には加護がないけど”

 それでも、殿下はそれでいいと言ってくれた。
 もちろんそれは仮初めの婚約者だからだとは思うが――

“そのままの何も出来ない私を認めてくれているのは間違いないもの”
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