えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
 心当たりがありすぎる私は、バクバクと早くなる心臓に気付かないフリをしながらなんとか探りを入れられないかと思案し――

「どうなの? エミディオ」

 と、兄の名前を聞いてホッと息を吐いた。

“私じゃなかったのね”

 だが、私とは違いしっかり者の兄がこうやって母から言われるとは何をやらかしたのだろうか。
 不思議に思い、ちらりと兄の顔色を窺うと、かなり不服そうな顔をしていてぎょっとする。
 何から何まで珍しい。

「当然申し出ましたが、断られました」
「あら。乙女の純潔を奪っておいてその言い草はないでしょう」
「えっ!?」
「そっ、れは」

 パチンと音を立てて扇を閉じた母がジロリと兄を睨むが、私はもうそれどころではない。

「お、お兄様誰に不貞を!?」
「不貞って言うな! 俺はちゃんと同意も取ってだなっ」
「ちなみにですけど、殿下は一線を最後まで守られたわよ」
「「なっ」」

 平然と昨晩の情事をバラされた私は一瞬で顔が熱くなる。
 そんな私を愕然とした様子で見た兄は、「まさか不能なのか?」なんてとんでもない疑いをジルにかけていた。

「っというか、どうしてそれをお母様!」
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