えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
「あら。王家の影たるものこれくらいの情報は持っていてよ」

“昨日の今日なんですけど!?”

 これが影の力なのかと思わず震えあがる。
 そりゃ、私なんてチャレンジする前からなれないと言われるはずだ。

「お、お兄様は誰と、誰に、何が」
「うるさい。お前にだけは言わん」
「どうして!?」

 あっさりとそう切り捨てられた私が不貞腐れるが、そんな私を相変わらず華麗にスルーすることにした兄。
 そんな兄に言い含めるよう、「ちゃんともう一度、真正面から申し込みなさい」と今日一日で何故か若干やつれつつある父が口にしたのだった。

 
 
「――ってことがあったの」
「わぁ、義兄上やるなぁ」

 クックッと笑うのはもちろんジルだ。

“不能の疑いをかけられていたけれど”

 怒ってもおかしくないのに、むしろ機嫌が良さそうなジルがなんだか不思議でじっと見上げる。
 そんな私に気付いたらしく、にこりと笑ったジルにちゅっと額に口付けられた。

「ふふ、まぁ確かに不名誉な疑いではあるけど、そうじゃないって今から証明出来るし」
「なっ」
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