えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
 にっこにこの笑顔でそんな事を言われ、私の顔が茹で上がったかのように熱くなる。

 ここは王城、しかもなんとジルの部屋。

『薬が抜けたら、僕の部屋に来て』という言葉通りにやってきた私を出迎えたジルにそのままベッドまで連れられ、まるで子供のように並んで寝転びながらとりとめのない話をしていた。

 彼から向けられる温かい眼差しが心地いい。

“思い返してみれば案外こうやって二人で並んで寝転がっていたかも”

 それは幼い時。
 そして肉壁婚約者になった後にも――

「ッ」

 ズクン、と下腹部が反応する。
 薬はとっくに抜けたのに、いや、抜けたからこそ自らの足でその先を願ってジルの部屋へとやってきたのだ。

「ルチア」
「……ぁ」

 穏やかで温かかった彼の眼差しの奥で揺らめくルビーにドキリとする。

「愛してる」
「私も」

 そしてどちらともなく唇を重ねたのだった。


「――ぁ、はぁっ」

 まだ明るい室内で全てを晒け出す。

“やだ、恥ずかしい”

 はしたないと思われていたらどうしよう。
 そんな不安が私の頭を過るが、触れる彼の手がやたらと熱くて胸が高鳴った。
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