えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
“ジルの熱で溶けそうだわ”

 触れられるのが初めてではないからこそ、彼から与えられる快感を思い出してごくりと唾を呑んだ。

「ルチアはここに口付けられるのが好きだったよね」
「ひゃ、あんっ」

 ちゅ、とまだ尖りきっていはいない薄紅色の先端にジルが口付ける。
 グリグリと舌で押し潰されると、ビリビリとした刺激が走った。

「尖ってきたね」

 くすりと笑いながらそんなことを言われ、私の顔はますます熱くなる。

「誰のせいだと……」
「ふふ、それは僕を喜ばせたくて言ってるの?」
「なっ、ひぁっ!?」

 きゅっと先端が摘ままれると快感が波のように何度も押し寄せ私を襲った。

“だめ、もうわけわかんない”

 気持ちよくてもどかしい。
 私はもうこの先の方法を知ってしまったのだ。

「今日は、する……?」
「ッ、――あぁ、今日は最後までする」

“最後まで”

 あの夜泣いて懇願したその先の行為。
 そして悲しみを浮かべ泣いて断られた行為。

 今彼に浮かぶのは溢れるほどの悲しみではなく、私に対しての劣情だった。
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