えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~

29.今度こそ、君と

「抜かないで」
「でも」

 戸惑うジルの首筋に、いつも彼が私にすることを真似して吸い付く。
 ジルみたいに上手くは付けられなかったけれど、うっすらと赤い痕が残り私は嬉しくなった。

「心が気持ちいい……から」

 チラッと彼の表情を覗き見ると、真っ赤に染まったジルと目が合う。

“だってこの痛みも全部、私が彼の特別だから与えられるものだわ”

 私が彼の特別だから。
 そして彼も、私の特別なのだ。

「この痕は、ジルが私のって証だから……、もう、刻んだから」
「ルチア、それって」
「だ、ダメ?」
「っ、ダメな訳ないだろ……!?」
「ひ、ぁっ!?」

 ズクンとナカで彼のが一層大きくなった感覚に驚く。

“さ、サイズ変更は聞いてないわ!?”

 まさかそんなことがあるなんて。
 人体の不思議に慄いていると、ジルの吐息が耳元に触れた。

「――ね、ゆっくり動いていい?」
「あ……、ん、うん……」

 私が小さく頷いたことを確認し、ジルがゆっくりと動き始めると痛みの奥に快感が揺らめいた。
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