えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
「心配させてごめんね、実は犯人を釣る為に失ったままでいただけで本当はいつでも取り戻せたんだ。光の加護に毒物は効かないし、加護というのは内から出るものだから」

 少し申し訳なさそうにしながら告げるジル。
 きっと加護のない私に気を遣っているのだろう。

“そんなこと気にしなくていいのに”

 外から加護を押さえつけ封じたものの、加護が内にあるものだったから内側から解除することが出来たのだろう。
 それは光の加護という特別な加護を持っているジルだからこそ出来る方法で、つまりは最初から彼には効かなかったのだ。

「ジルの加護が戻ってきて嬉しいわ」
「ルチア……」
「本当よ? だってジルは加護がなくても私のことを愛してくれるんでしょう?」
「当たり前だ! 僕は加護なんて関係なく、僕という個を見つけてくれたルチアだからこそ好きになったんだから」

 真っ直ぐ射貫くように見つめられながら告げられるその言葉に胸が高鳴る。
 
“ジルの方こそ、そのままの私を見つけてくれたのにね”

 同じようなことを思っていると、なんだか可笑しくてクスクスと笑みが溢れてくる。
 きっとこんな時間を幸せと呼ぶのだろう。
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