えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~

最終話:えぇっ、本気だったんですか!?

 泊まって行けばいいのに、なんて散々言われ後ろ髪を引かれつつも帰った侯爵家。
 やはり疲れもあったのか、ジルの部屋で仮眠は取ったというのに一瞬で深い眠りに落ちた私は、翌日ざわめく邸内の違和感で目を覚ました。

「え、何……」

 ぼんやりとしながら起き上がると、まだ早朝と言ってもいい時間。
 侍女が起こしにくるのもまだ先だろう時間だったが、流石にこの騒がしさに疑問を持った私は首を傾げながら階下へと降り――……


「あ、おはようルチア」
「じ、ジル!?」
「体の調子はどうかな? 安心して、今日は僕がずっと抱っこして移動するね」
「え、移動って……え?」

“私何かジルと約束してたかしら?”

 怪訝に思いながらチラリとジルの隣に立つ父を見ると、まるで全て諦めたかのように表情が死んでいてギョッとする。

 その隣に立つ兄は何かを考え込んでいるし、母はどこか楽しそうに眺めていた。

「さぁ、準備を整えてすぐに向かおうね。必要なものは全て持ってきてるから」
「必要なもの?」
「もちろん君のウェディングドレスだよ!」
「え、えぇえっ!!?」

 ◇◇◇

「ま、まさかこんな急に……」
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