えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
 自身の薬への耐性のなさに項垂れるものの、立ち上がれないなら私から友人の恋人を襲うという最悪な状況が回避できそうで僅かに安堵する。

 だが、現状良くはなっていない。
 
 苦しく、もどかしく、切ないこの熱と疼きに思考が焼ききれそうだ。

“どうすれば……!”

 途方に暮れたそんな時、自身に近付く足音が聞こえビクリと肩を震わせる。
 まずい。こんな状況で遭遇してしまっては。

 色々なパターンが脳裏に過り青ざめているが、自由の効かない体ではどうすることも出来ずあわよくば私に気付かず去ってくれないかと願っていた時だった。

「フラージラ嬢?」

 私に声をかけてきたのは私と同じ赤い髪に、熱くもあり冷徹さも感じさせる赤褐色の瞳。
 そしていつもピンチの時に手を差しのべてくれる、王子様のような騎士――エミディオ・コンタリーニその人だった。

 ◇◇◇

「医師は……っ! 呼ばないで、ください」

 戸惑いつつも、私の様子にただ頷いてくれたエミディオ様が休憩室まで連れていってくれる。
 流石ルチアの兄でありこの国のエリートとも呼べる第一騎士団の騎士団員。
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