えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
 それも、王家の盾と呼ばれるコンタリーニ侯爵家の嫡男だ。
 体中を熱くし息を荒げる私に何かしらを察しているのに紳士的に振る舞ってくれる彼は、私をベッドへと寝かせた後サイドテーブルに大量のレモン水を置き、一口飲んでただの水だと証明してからすぐに頭を下げた。

「何かあれば声を出してください、扉の前で待機しておりますので」

“毒味までして、更には護衛もしてくださるつもりなの?”

 彼からすれば、私が誰から媚薬を盛られたかはわからない。
 ならば媚薬を盛った犯人が私の休むこの場所に忍び込む可能性があると考えてくれたのだろう。

“違うの、私が襲う側なのよ”

 どうしてこの人はこんなにも高潔なのだろうか。
 妹の友達だから?
 いいえ、世間の評価では妹の婚約者に横恋慕する節操のない女だったはず。

 騎士だから?
 だから王国民に平等に接して助けてくれるの?

“わからない、どうしよう、体が熱いわ”

 冷静に分析しようとする思考を覆うようにじわじわと熱が侵食する。
 とりあえず彼が置いてくれたこの水を沢山飲んで、あとは一晩この熱に耐えれば――
 
「……フラージラ嬢?」
「え?」
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