えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~

4.これが牽制ってやつですか?

「……あの、不完全燃焼なんですけど」

 思わずムスッとしながらそう告げると、シャンパングラスを二つ持った殿下が苦笑する。

「ルチアは一人じゃないんだから、何かあれば僕と一緒に乗り越える方がよくないかな?」
「それはそう、ですが……」

“確かに私一人で前のめりだったかも”

 仮初めとは言え表向きは正当な婚約者なのだ。
 私の評判が落ちれば、それは殿下の評判にも関わってしまう。

 改めてその事実に気付き思わず俯いた私を気遣うように、そっと殿下が私の前にグラスを差し出した。
 そして私はそのグラスを二つとも受け取り――

「ちょ、ルチア!?」
「毒味します!」

 ごくりと一口飲んで安全を確かめた方を再び殿下へと差し出す。

「舌の痺れなどはありません! 安全です」
「……あのさぁ」

 なんだかんだでずっと微笑みを絶やさなかった殿下が思い切り嫌そうな顔をした。
 だがそんな表情すらも格好いい。

“レアショットありがとうございます!”

 思わず内心お礼を言うが、もちろん口に出す訳にはいかないので黙っていると、大きなため息を吐かれてしまう。
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