えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
 少し戸惑った赤褐色の瞳が私を見下ろし不思議に思う。
 私は水へと手を伸ばしたはずなのに、何故か私の手は彼の服の裾を掴んで引き留めていた。

“違う、こんなつもりじゃ”

 手を離そうとするが、何故か思い通りにいかない。
 どうしてだろう。
 あぁ、熱い、熱いわ。

「水が」
「今飲まれますか? グラスへ注ぎましょうか」
「口移しで……」
「は?」

“?”

 自分が何を口走ったのか一瞬理解が出来ず、唖然とする彼の顔をぼんやりと見つめる。

「本気ですか?」

 口移しで水をねだったということに気付き慌てて否定しようとするが、これも媚薬の力なのだろうか?
 否定の言葉は声にはならず、何故か頷いてしまっていた。

「……そうですか」

 はぁ、と小さくため息が吐かれドキリとする。
 こんなはしたないことを願われ呆れてしまったのだろう。

 そう思うと胸の奥がツキリと痛み、だが熱い体は彼との触れ合いを未だに期待しているのか熱いままだった。

“もう出ていってくれたらいいのに”
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