えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~

2.取らなくって構いません!

「気分はどうですか」
「……んん、……ぁ、え?」

 低い、だが優しく声をかけられ微睡みの中にいた私は声の方へと手を伸ばす。
 すかさずその手がきゅっと握られ、少しかさつきゴツゴツしている手が彼の努力の賜物なのだと思うと愛おしさすら感じ――……

“『彼』って誰!”

 うとうとと開ききっていなかった両目をカッと見開き、勢い良くガバリと起き上がると、すぐ隣から少し焦った気配がした。

「ちょ、そんな勢いで起き上がって大丈夫なのか……!?」
「え? えぇっと」

 ベッドに寝ていたのは私だけで、ベッド横に立っていたその男性が狼狽えた様子で私の手を握っていない方の手をベッドにつき私の様子を窺っている。

 私の髪と同じ赤い髪に、どこか冷徹そうにも見える赤褐色の瞳が僅かに揺れていて驚いているのは間違いないのだろう。

“ルチアの……お兄様だわ。エミディオ様”

 ぼんやりと彼を見上げると、バチリと目が合う。
 じっと見つめ合っていると途端に恥ずかしくなり頬がじわりと熱くなった。

 そしてふっと突然私から顔を背けたエミディオ様は、コホンと咳払いをして口を開く。
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