えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
「さっきずっとモロ出しでしたけどね」
「それはそうなのだけれどッ」
「あと、もう隅々まで全て見ていますが」
「――ッ!!」

 恥ずかしい指摘を淡々とされ、羞恥心で顔が茹で上がりそうになる。
 だがそれと同時にいとも簡単にドレスを着せられ、彼にはそれなりに経験があるのだと察し心が沈んだ。

“そうよね、だって彼はエリートだもの”

 婚約者はいないとルチアが言っていたけれど、恋人はいたのかもしれない。
 もしくは娼館かもしれない。
 もしくはもしくは幼馴染みとか、もしくはもしくはもしくはなんかよくわからないけれど遠征先ごとにそういう相手がいるのかも。

「フラージラ嬢?」
「え、あっ、ごめんなさい!」

 完全に思考の波に囚われていた私は、彼に声をかけられハッとした。

 我が家の侍女ほどキリキリと締められていないものの、コルセットだけではなくドレスもすっかり着せられている状況に唖然とする。

「いつの間に私は立っていたの……!?」
「着させられ慣れているんでしょうね、自然にベッドからおりてましたよ」

“私ったら!!”

 どれだけ失態と迷惑を重ねればいいのだろうか。
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