えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
 いくら私に火の加護があるといえど、こんなに恥ずかしい思いをしては口から火を吹いて火傷してしまいそうである。

 火なんて吹けないけれど。
 

「記憶は残っておりますね?」
「……はい」
「なら、責任の話なんですが」
「そ、その件ですがッ」

 彼の言葉を遮るように叫ぶように声を張り上げる。

“これ以上迷惑をかける訳にはいかないわ”

 私のドレスを簡単に着せてしまったことを考えると、彼はこういった行為もはじめてではないのだろう。

“薬の影響があったとはいえ、その、とても気持ち良かったですし……!”

 よくあることならば、たった一回で責任を取らせるだなんてあまりにも酷だ。
 それも原因は私側にあるのだ、むしろ責任を取るのは私の方である。

 だからせめて、彼を私から解放してあげなくてはならない。
 そう思った私は、バッと彼の方を見上げて声を張り上げ宣言した。

「責任は取らなくって結構ですわ! どうぞお忘れくださいませ! 以上!!」
「……は?」

 不機嫌そうにひそめられた眉の皺がより深くなる。

“ひえぇ!”

 完全に気分を害してしまったようだが、ここは引く訳にはいかない。
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