えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
 それほどまでに、彼はただひとりしか見ていなかったから。

「……本当に良かったわ」

 彼を襲わなくて。
 大事な友人を悲しませることにならなくて。

 その大事な友人の兄と関係を持ってしまったけれど、ただの人命救助なら問題にはならないだろう。
 私側が騒がなければ、きっと噂が流れることもないはずだ。

「エミディオ様も、きっと今頃は忘れてくれているわよね?」

 私は一人きりの馬車から景色を眺めつつ、そう呟いたのだった。
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