えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
 それはつまり、ちゃんと彼は彼自身として私を選んでくれたということで――

「だからと言って、自分で断ったくせに少し不安になったくらいでエミディオ様を思い出すだなんて! 私ってば! この愚か者ッ! ですわ!」

 動揺しそんなことを口走っていると、扉がノックされた。
 いつもよりどこか余裕がない様子で叩かれたその扉に首を傾げる。

“我が家の使用人らしくないわね”

 異変に戸惑いつつ扉を開く許可を出すと、ガチャリと開かれたその先にいたのは我が家のメイド――では、なく。

「王城の……?」

 胸元にキラリと身元を証明する王家の紋章が入ったバッチをつけた、使いの者が立っていた。

 ◇◇◇

「お父様! お母様!」

 使いからの通達書を受け取った私はすぐに中を確認し、慌てて王城へと戻った。
 そして応接室で待っていた両親と合流する。

 ――だがそこに妹はいない。

「お前は、その……大丈夫だったか?」
「えぇ。私は問題ございませんわ」

 いつもは公爵らしくいつも凛々しい父だが、今は覇気なくどこか弱々しい。
 だがそれも仕方がないだろう。
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