えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
「甘ったれないで。私は負けたから出ていくの、仲良しこよしで全て成立する訳じゃないわ」

 その言い分は最もで、そして辛辣。

「陰謀も策略も渦巻いている仄暗い世界よ。勝った貴女は、貴族として立ち続ける義務があるわ」

 だからこそ、その手厳しい指摘の奥にメルージラなりの喝が入っていることに気が付いた。

“……そうね、私はまた無意識にメルを過保護に庇おうとしていたのかも”

 それではダメだと知ったばかりだというのに自身の愚かさに内心苦笑しながら、私はもう一度彼女をしっかりと見つめ直した。

「でも、手紙は許してちょうだい。だって私たちは貴族である前に血を分けた姉妹なのだから」

 私の想いが伝わったのだろう。
「勝手にすれば」と拒絶ではない言葉が返ってきてホッとしたのだった。


 私を置いてその場を歩き離れる妹の背中を眺める。
 いつもならすぐに走って追いかけていたが、そうすべきではないと私はただ見守った。
 
 もちろん王家の騎士がメルについているので安全面も問題ないだろう。

「次会えるのはいつになるのかしらね」
「さぁ、彼女の努力次第ですがそう遠くないのではないでしょうか?」
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