えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
 私を心配してくれる彼の表情は、まるでお伽噺の魔物のように険しいものだった。

「なんでっ!?」
「……はぁ、はじめて殿下の気持ちが理解できた。こういうことか……」
「え、え? こういうって、どういう……?」

 訳がわからずそう問うと、半眼になったエミディオにジロリと睨まれる。

「責任を取られる覚悟もない貴女は無責任だと言いました」
「そ、そんな文字数ではなかったと思いますけれどっ!?」
「あ、な、た、は、む、せ、き、に、ん、だ!」
「えぇえっ!?」

 苛立ちを隠そうとせずそう断言され唖然とする。

「私のどこか無責任なのです!?」

 思わずそう言い返すと、エミディオもその勢いのまま口を開いた。

「俺は確かに聞きました! 責任を取られる覚悟はあるのかって!」
「で、ですが責任は」
「貴女は頷きました。ならば俺に責任を取られるべきじゃないんですか!?」

“それって”

 責任を取らせることは迷惑をかけるのだとばかり思っていたが、もしかしたらそうではないのだろうか。
 彼はあの夜、仕方なく私を抱いたのではなく、ちゃんと先まで考えて決意してから抱いたのだろうか。
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