えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
「あっ、いやその、そうじゃなくてその、私は……せ、正妻にしていただけるのかなって思いまして!」
「――ほう?」

“ひえっ、絶対言葉を間違えたわ!?”

 ピキッと音が聞こえそうやほど彼の表情が強張り一気に青ざめる。
 なんとか言い繕えないかと思案するが、焦った私にはいい言い訳は思い付かず、仕方なく正直に白状することにした。

「その、エミディオ様がすごく慣れてるように思えて、だから……」
「はぁ。俺のどこが慣れてるんだ」
「ぬ、脱がすのも着せるのもスムーズでっ」
「あぁ、それはそうだな。お転婆な妹が常に何かしらやらかすから一通りは出来る」
「そっ、それに口付けがっ! とっても、気持ちいいのです!」
「それは……光栄です」
「はい……」

 なんとも言えない微妙な沈黙が私たちを包みいたたまれない気持ちになっていると、突然プッとエミディオが吹き出した。

「あー、はは、本当に貴女って人は……」
「その、ごめんなさい……?」
「謝らなくていいですよ。面白かったし。あまりこんなことを宣言するのも格好つかないのですが、俺の経験は貴女だけです」

 言われた言葉にキョトンとしてしまう。
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