えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
「見ただけですぐ二人が相思相愛とわかるからね」
「な、なるほど……、い、いやっ、でも流石にそれは……っ」
「もしかしてルチアは、僕が最愛の人を膝に乗せて可愛がることすら出来ない男だと思ってる?」
「えっ、えっ!? い、いえ、そんなことは思っておりませんが……っ」

 でも、そういうことは本命にするべきではないのだろうか。
 そんな考えが頭を過り、そしてそれが表情にも出ていたのだろう。

「何事も練習というのは大事だよ」
「なる、ほど?」
「まぁ本番の相手もルチアなんだけど……んんッ、とりあえずこれはお互いの練習だと思ってどうだろう?」
「わ、わかりました!」

 ごくりと唾を呑み大きく頷く。
 そしてベンチに座った殿下から促されるまま彼の膝へと腰を下ろす。
 少しごつごつとした彼の太腿は、見た目以上に鍛えているのだと実感させられた。

「抱きしめてもいい?」
「えっ!?」
「婚約者同士ならこれくらいは普通だと思うんだけれど」

“そ、そうかもしれないわね!?”

 膝の上に座っているのだ、今更抱きしめられるくらい……なんて思っていたのだが、実際に腕が回され密着するとドキドキとしてしまう。
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